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書籍:利益のあがる勝ち残り工場経営
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8章 経営改善成功の10原則  &ちょっと休憩 「感情は行動のエネルギー」


1.社員が夢中になる「夢」を作る

会社が成長し続けていくためには「夢」が必要である。小さな子供が肉体的にも精神的にも急速に成長していくのは、大人になったらこういう人になりたいという何年か先の希望の姿(夢)を持っていて、無意識のうちに貪欲にいろいろな知識を身につけていくからであり、会社もそれと同じである。
ところで会社の夢は、いろいろな年齢の社員がいることから、2〜3年後に実現できるもの、また5年先に実現できるもの、さらに10年先を目指したものなどが混在しているほうがよい。しかも夢であるから、その実現が全社員に大きな期待感や満足をもたらす心はずむものでなければならない。
その夢の中身は、「企業が将来に社会に貢献する製品」と「今よりレベルの高い社員の待遇」の2つである。
今働いている社員の大半は、自動車の好きな人が自動車会社に就職し、建物を作ることが好きな人が建築会社に就職しするように、きっと会社の製品の何かに興味を引かれて入社したにちがいない。
だから今の製品や技術に関連して、なお一層社会に貢献する製品を作り出すという夢には、ほとんどの人が夢中になるはずである。
また「今よりレベルの高い社員の待遇」も絶対必要である。「ハングリー精神」といわれるように行動力を強めるもとになる。
このような夢を自分1人で考えて作り出し、幾多の失敗を乗り越えて実現する人が「天才」であるが、夢を自分で作るのではなく、他から与えられて実現できる人は我々凡人にもたくさんいる。
だから経営者の1番の仕事は、会社に夢を作り、それを社員に語り、全員でその実現意欲を共有化させていくことである。


2.「日常業務」と「経営改善」の違いを教える

経営改善をはじめたが「受注量が急増したため生産対応が先決である」「売上高が減少しているので営業に力を入れなければならない」また「クレームが多発し、その対策が最優先である」さらには「今日は休みの人が多くて改善会議に出席できない」など、経営改善にブレーキをかける問題は非常に多い。
このような日常の多くの問題は企業にとっては切実ではあるが、それらを理由にして改善のスピードをゆるめる会社と、それはそれ、これはこれとうまく割り切って経営改善を進める会社がある。
もちろん後者の対応が必要であって、前者は、どの会社にもあるさまざまな日常の問題を、あまり積極的にはやりたくない経営改善の遅れの理由づけにしているだけである。
なぜ経営改善はやりたくないのかであるが、日常の業務や作業と正反対の面があることを教えられていないからである。
日常の業務や作業は決められたことを守るという「維持が原則」であるのに対して、経営改善は業務や作業の方法を変えていくという「変化が原則」である。この維持と変化はまったく反対の考え方であるが、一般に、社員には「決められたことを守る」ことの大切さは新入社員のときから教育するが、現状を変えていくことの必要性についてはあまり教育していない。だから社員は無意識に「維持」の仕事を大切に考え、それに重点を置くようになる。
日常の問題だけの処理をしていても会社は利益を出し続けることはできない。もちろん将来のビジョン達成である経営改善だけをしていても今の利益は出ない。全社員に「日常業務」と「経営改善」の違いと、両方の大切さを教えることが必要である。


3.「可能性」と「必要性」からの目標値設定

経営改善の目標値の設定には、次の2つの考え方がある。
ひとつは「可能性からの目標値設定」である。たとえばコストダウンの目標値を設定するとき、「3%くらいならアイデアが既にあるから、少し上積みして5%に設定しよう」などである。
このような目標値の設定は、いくらかの改善アイデアが既にあって達成の可能性が高いために、全員の納得性が得られやすい。
もうひとつは「必要性からの目標値設定」である。たとえば「ライバル会社に価格競争で勝つためには、当社ではA製品の15%値下げが必要である。そこでコストダウンの目標値として20%を設定する」などである。この目標値は改善アイデアがあるから出てきたのではなく、自社が勝ち残るための必要性から出てきた数値である。
このような2つの目標値設定の使い分けだが、トップダウンで進める経営改善では、それらのテーマが外部環境変化の中で自社が将来繁栄するという全社員にとっての「必要性」から出てきたため、必要性からの目標値設定になる。
一方のボトムアップの経営改善では、当初は可能性からの目標値設定で行うほうが納得性が得られてとっかかりやすい。しかし、しばらく続けると、容易にアイデアが思いつく改善はやり尽くすから、その時点で必要性からの目標値設定に切りかえていくとよい。
また、可能性からの設定では顕在的な問題の改善が進むのに対して、必要性からの設定では潜在的な問題の改善が進む。だから本来改善は必要性から実施するものなのだが、どしても人は可能性で目標値を設定する傾向があり、この考え方を払拭することは経営改善における人材育成面での大きな課題でもある。


4.ミドルジョイントの大切さ

トップダウンとボトムアップの両面から経営改善を進めるうえで重要なのがミドルジョイント(中間管理者による結合)である。
いくらトップが素晴らしいアイデア思いついて実行に移そうとしても、実行部隊までその主旨が伝わらなくては実現しない。
また第一線の社員がいくら現場の問題点や課題また改善案を訴えても、中間管理者がそれを取りあげなければ解決されない。
このように中間管理者の経営改善における役割は非常に重要である。しかし多くの中小企業では、中間管理者が日常の仕事に追われて経営改善どころではないといった姿を多く見受ける。
彼らの日常の仕事は、納期確保やクレーム対策、部品の遅れ調整、また休んだ人の応援というようなトラブル処理が大半を占め、それが自分がするべき仕事と勘違いし、経営者も容認している。
管理者のもっとも重要な仕事は「構造改革の実行」である。決して発生したトラブルの処理ではない。現状や将来においてトラブルが発生しないような会社の構造、また将来さらに事業が発展するような会社の構造に変革していくことである。
つまり、トップダウンで描いたビジョンや経営改善のテーマを部門レベルに展開し、詳細の実行計画の立案や役割分担をして推進すること、また日々の現場の問題発見から原因の追求、さらにそれらの原因の背景を見抜いた上で適切な対応を打っていくこと、このようなミドルジョイントが出来ない中間管理者は失格である。
トップはこのような仕事をこなせる管理者に再教育するか、適切な人にバトンタッチさせるかの方策をタイムリーにとっていくことが、経営改善をうまく進める上で大切である。


5.横の連携を強化する

組織力を発揮する上で重要なのは結束力である。この結束力にはトップからボトムまでの縦の結束力と、製造部門〜営業部門〜開発部門〜管理部門にまたがる横の結束力がある。後者は前者に比べて弱く、結束どころか反対に対立した状態も見受けられる。
このような状況は日常の生産や販売などの業務でも見られるし、またトップダウンやボトムアップの経営改善でも見られる。
中間管理者である部門長は自部門の活動を優先しがちで、たとえば製造部長は「納期が間に合わないのは営業が短納期の受注をしたからだ」とか「資材の部品手配が遅れたからだ」と愚痴をこぼす。
また営業部長は「製造部のコストダウンが進まず、原価が高くておまけに納期が遅いから受注が取れない」と愚痴をこぼす。
愚痴は問題発見だからよいとしても、それに解決の意思を加えて改善課題に進展させることが部門長の大きな仕事である。
すなわち製造部長は納期短縮の改善計画を立案し、また営業部長は納期短縮について営業部としてできるテーマを検討する。さらに設計や管理部門がこれに加わると総合的な納期短縮の改善テーマが設定できる。だから愚痴は「こぼさずに解決する」ようにしたい。
 このような横の連携不足を抜本的に解決するには、部門長の評価を見直し、@ 自部門の次期管理者の育成と業務の移管 A 部門間にまたがる経営改善の実行と成果 B 会社業績 の3項目をメインにすればよい。部門の目標達成については、次期管理者育成の評価項目の一部に加えるか、次期管理者の評価項目にする。
このように割り切った3つの評価項目で中間管理者を評価すれば、横の結束力が強化され組織力が発揮されるようになる。


6.ひと仕事5年で配置転換を行う

ひとつの部署に長くいたり、同じ仕事を長くし続けることは、本人にとっても会社にとっても弊害は大きい。
本人にとっての弊害の1番目は、配属された部署や仕事が適正とは限らないことである。やはり最初はその人に適した部署や仕事からスタートしたほうがよい。そこで仕事の進め方を覚え、改善を実践し、まず自分に対して自信をつけさすことである。
弊害の2番目は、適正な部門や仕事についたとしても長く同じ仕事をしていると、自分なりに改善はやり尽くしたと思い込み、今の仕事のやり方がベストだと考えて改善がストップする。いわゆる固定観念ができあがり、この時点で本人の成長は止まる。
3番目は、長く仕事をすると条件反射で仕事ができるようになる。慣れとでもいうか大切な面でもあるが、慣れだけで仕事をすると頭を使わなくなり、本人の思考力は低下していく。本人はスムーズに仕事ができているから賢くなっていると思っているかもしれないが、表面的に仕事をしているだけで、成長から衰退へと移行する。
一方会社への弊害だが、その人が担当する仕事の改善が進まないうえに、その仕事をできる人が育たない。もしその人が部署のリーダーなら、自分の仕事を手放さないから次のリーダーが育たない。
ではどのくらいの期間で配置転換をしたらよいかであるが、もちろん仕事や本人の適正や能力によって異なるが、ひと仕事5年を目途にしたらどうだろうか。1年目に仕事を覚え、2〜3年目に仕事の幅を広げながら改善し、4〜5年目は他の人に仕事をバトンタッチすること、また人を育てることを主眼にすればよい。
優秀な人ほどこの期間を短くすることも必要である。


7.年功序列は廃止する

昇進・昇格・昇給を年功序列で行っている会社はまだまだ多い。
変化が遅い時代なら年功(勤続年数)は、仕事ができる基準になったかもしれないが、変化の激しい現在では、長すぎる年功はかえって仕事を進める上でも経営改善をする上でも邪魔な存在である。
だから昇進は、年功序列を完全に廃止して実力のみで行う方がよい。昇進して新たな上の役職で部下を使って仕事を進めるには、それにふさわしい実力が必要で、たとえ今はなくても、その役職での仕事を通じて早急にマスターできる可能性がなければならない。
もちろん過去の仕事の実績は大いに参考になるが過去のものであり、これから先に発揮できる力を見抜く眼力をトップは持ちたい。
昇格は過去から今までの実績に応じて行ってもよい。年功を含めた実績で昇格を行い、ふさわしい資格を与える。しかしこの資格と役職は無関係で、一種の勲章であるから組織運営に問題はない。
また昇給は、過去1年間の仕事の成果と、これから1年間に期待できる仕事の成果に応じて半年単位で決めるとよい。
過去1年間の仕事の成果が大きく、これからの期待値も大きければ給料は上がり、これからの期待値が小さければ横ばいで、過去の成果が小さくこれからの期待値も小さければ下がる。
結果的に、過去の給料と比較して金額が上がっていれば昇給で、下がっていれば減給であり、毎年給料は上がるといった考え方を変えていく必要がある。大きく上がる人、あまり上がらない人、下がる人が出てきて公正な評価ができている。
このような考え方で社員を評価する仕組みは、優秀な人をさらに伸ばし、成果の少ない人を反省させて奮起させるうえで必要である。


8.組織編成と予算編成は半年単位で行う

日々の生産・販売などの仕事とともに経営改善の推進には「人」と「予算」が必要である。この2つは非常に大切であり、どちらが不備でも十分な経営成果は得られない。
人の教育は非常に大切であるが、もっと先天的な「性格」で見たときには「維持の仕事に向く人」と、「変化の仕事に向く人」がいる。
日々の生産販売活動に必要なのは維持の仕事に向く人で、経営改善の推進には変化の仕事に向く人が必要である。
だからひとつのグループの中にはその両者がともに必要であるから、グループ全体のバランスを見ながら、ある程度の経営成果が評価できる半年単位で組織の再編成をしていくとよい。
次に予算だが、予算設定でこの項目の予算は昨年対比5%アップで、こっちは7%ダウンといった調子で、昨年の予算との比較で設定している会社が多い。無難な予算計画はできるかもしれないが、予算設定までが仕事で、そのあとは惰性の仕事になりかねない。
予算はこれからの仕事の予想成果に対して設定するものだから、部門別にこれからの仕事を列挙し、その仕事ごとにその成果(会社業績に対する影響の大きさ)を金額で予測する。その予測が大きく期待できる仕事、また期待しなければならない仕事に優先的に予算を設定する。だから環境変化の激しい現在は予算の設定期間は半年程度と短い方が具体的に検討がしやすい。また長期のプロジェクトは半年単位で見直す考え方で予算設定をするとよい。
ダイナミックかもしれないが、これからの仕事を十分に考えた予算設定になり、またその成果を必ず問われ評価されるため、必死に予算計画以上の仕事の成果をあげようと努力するのである。


9.情報のジャストインタイム化を進める

現在のように情報化が急速に進展している状況では、情報の流通速度が会社業績の差になるから、社内外で情報が最短時間で縦横に行きかう環境を作ることが非常に大切である。そのためには必要な情報が、必要な時に、必要な人に伝わる仕組みの構築とその運営、また全社員にパソコンが使える教育をすることが必要である。
情報内容としては、製造部門、営業部門、開発部門、管理部門がそれぞれ取り組んでいる仕事の内容や必要としている情報、またプロジェクトで取り組んでいる経営改善の進展状況や各グループの改善活動の状況など、さらに今困っていることや必要なアイデアなどがある。もちろん秘密事項の取り扱いには注意を要する。
会社の食堂に何台かのパソコンを置いて昼休みや休憩時間に見れるように、また入力ができるようにすれば、仕事でパソコンを使わない人も経営状況を知り、また持っている情報を発信できる。
こうして他の部署の仕事が理解できるように、また他部署の仕事にプラスになる情報の提供ができるようになれば、当然その人の仕事に対する意気込みや精度が格段と高まる。
さらには、売上高の推移の状況や現在の利益を公開しても面白い。この数字を見ているうちに全員が経営的センスを持ち出し、それぞれが取り組んでいる経営改善に大いにプラスになるだろう。
日常の仕事を売上高や利益と照らし合わせて考えているのは経営者であるが、全社員が経営者的センスを持ったらきっと強い体質に、そして儲かる会社になるに違いない。
利益を社員に知られたくないオーナー社長もいるが、全社員に公開して、知ってもらうことの大きなプラス面を考えたほうがよい。


10.摩擦は進歩の源である

経営改善を進めていくうちにいろいろな「改善の障害」が出てくる。よいアイデアが出ない、上司が結論を出さない、他の部門が協力してくれない、改善したが思うように効果があがらないなどで、結果的に改善がストップするか、遅れることになる。
しかし、改善で大事なことは改善スピードである。
どの会社も経営改善に必死に取り組んでいるが、先に結果を出した会社が勝ち残る。会社の競争では改善の遅れは許されない。
だから計画に対して実行が遅れそうだと、上司は部下を叱咤激励し、一方上司が結論を出さなくて改善がストップしているならば上司に対して結論をうながし、また他のメンバーや他部門に協力を強く働きかけていかねばならない。
しかしこのように周囲に働きかけていくと、改善を予定通り進めようする人と、ゆっくりとマイペース(?)で進める人との間に必ず摩擦が生じる。そして働きかけが大きいほど摩擦力も大きい。
この摩擦をどのように乗り切るかは、その人の課題であるとともに組織の大きな課題であるが、摩擦が出ることを歓迎する社員や組織体質に意識改革することが望ましい。
日常生活では摩擦がなければ歩くことも、山に登ることも、自動車で移動することもできない。足やタイヤと地面の間に摩擦があるから前進力が生まれて前に進むことができる。
それと同様に摩擦があるから会社は進歩するのであり、摩擦が出ないような経営改善では大きな経営成果や体質強化は期待できない。
昨今やさしい人が多く、厳しい人が少ない会社が多くなったが、人にも自分にも厳しい「社内の鬼」は貴重な存在である。


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ちょっと休憩 「仕事に燃える」

「仕事に燃える」という言葉には、「全力を尽くす」「没頭する」「能力を最大限に発揮する」という、非常に前向きなイメージがある。
社員1人1人が自分の仕事を通じて燃えれば、「全員が伸びる状態」「切磋琢磨の状態」「全員が生き甲斐を感じる状態」が生まれ、目標に邁進する活性化された素晴らしい組織ができあがる。
仕事に燃えるために必要なものは、
 1)燃える物=達成意欲をかきたてるに十分に価値のある仕事            
 2)酸 素  =上司や部下、周囲との前向きな人間関係や職場風土  
 3)熱   =仕事に対する興味とやる気、厳しさ、そして体力
で、全社員の力で会社の中に作りあげていくことが大切である。
これらの3つの要素がそろった時に、「仕事に燃える」状態になり、毎日が楽しく、最高の幸せを感じることができる。


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