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書籍:利益のあがる勝ち残り工場経営
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5章 経営資源と経営環境の活用  &ちょっと休憩 「表裏一体の原則」


1. 優秀な「人」を育てる

 一般に経営資源といわれる「人・物・金・情報」の中で、もっとも大切なのが「人」すなわち人材力である。なぜなら「物・金・情報」を駆使するのが人だからで、どのような人が必要かというと、「優れた固有技術や技能を持っている人」と「現状を変革していく力を持った人」である。
 まず固有技術や技能とは、その人が担当する仕事に必要な知識や技術で、たとえば食品会社では、技術系の人は食品材料や調味料に関する知識、煮る・焼く・揚げるという加工に関する知識や技術である。また経理の人は日常の経理処理や決算処理に関する知識や技術、営業の人は業界や人脈、またお金の回収に関する知識や技術である。さらに製造現場では旋盤で加工する技能、溶接する技能、組み立てる技能、図面を読む技術などがある。
 このような固有技術や技能のレベルアップは必須であり、一度全社員の固有技術や技能について棚卸をしてみることをお奨めする。アンケートやテストで調査し実態を把握すれば何が欠けているのか、何を伸ばすべきなのかといった課題が見えてくる。
 次に、現状を変革していく力を持った人が必要である。いくら優れた固有技術や技能を持っている人がいても、現状維持だけでは会社はだめになる。それらの人が新たな技術や技能を生み出していかないといけない。それが現状を変革していく力である。
 しかし一般的に優れた技術や技能を持った人は、自分の能力に自信を持っているから現状を変えたくない現状維持型が多い。
 このような人には会社のビジョンや自社の進むべき道を何回も話し合い、新しいものに挑戦するように仕向けることが大切である。


2.個人の技術を「会社の技術」に蓄積する

 社員個人が持っている技術や技能(人材力)とともに、会社が持っている技術力、すなわち「工業所有権」や「生産設備」、また事務や作業などの「標準類」は重要である。
 工業所有権には特許権や実用新案権などの他に、物品の意匠(形状・模様・色彩など)や商標(文字・図形・記号・立体的形状・色彩とその組み合わせ)を保護する権利がある。
 このような会社が持っている技術力は特許権なら20年、実用新案件なら6年間、また生産設備は壊れるか陳腐化するまで会社に利益をもたらすが、人が持つ技術や技能はその人が退社すれば会社の中からなくなってしまう。
 そこで社員が持つ技術や技能を会社の技術に蓄積していくことが大切になる。つまり高度な技術や技能を持つ人に、さらに一層の研きをかけてもらいながら(もちろん、磨きをかけてもらう環境整備が必要である)、どんどんと工業所有権を申請したり、高度な技能の機械化や標準作り、さらに若手社員への技能教育をするのである。
標準類が完備されていれば、新しい人でもその仕事についてから短期間で高度な技術をマスターすることができる。
 中小企業を見ていると工業所有権の獲得に取り組んでいる会社が多いが、後者の高度な技能の機械化や、技術や技能を標準化して会社や若手社員に残すということに本腰を入れて取り組んでいる会社は少ない。機械は買ってきたまま、標準書はなし、技能の伝承は成り行きでというのが現状で、もったいないことこのうえない。
 固有技術・技能を会社にいかにして蓄積していくかは、中小企業にとって発展のための大きな課題である。


3.「設備の能力」を最大限に発揮する

 製造業の会社は製品を製造するための生産設備を持っているが、毎年設備が古くなった分だけ減価償却を行う一方、新規設備投資を行い設備能力という経営資源を強化している。
 そうしないと、生産性が高くて製品品質がよい生産設備が日々開発販売されている現状では、ライバル会社との競争に負けていく。
 しかし設備はお金を出して買ったら、その日からそのままの状態で100%の性能が出るわけではない。ほとんどの生産設備は買ったときには多くの不具合が発生し、また自社の使い方(設置環境・製品内容・生産ロット・作業者の技能レベル…)に合致していないから、改善・改造をして設備をいかに自社の生産条件に合わせて高生産性を確保していくかが大切である。
 もちろん買う段階でも十分な検討をし、自社に適合した仕様に改造して購入しているだろうが、使ってみないとわからない面が多いため、買ってからの改善・改造が絶対に必要である。
 設備の製造メーカーは図面を書いて設備を作ることはプロであるが、試運転程度にしか使ったことはないため、長時間の稼動状態での多くの不具合、特に小さいながらも高生産性確保のために重要な不具合には出会っていない。もちろん故障で設備が動かないというようなレベルの問題には精通しているが、小さな工夫・改善はあまりできていないのが現状である。
 自社の設備について、どのような種類の設備があり、どのような改善・改造を施してあるのか、現状で使いにくい点や不都合はないか、また他社にない当社だけの強みの設備やノウハウは何かなどの「設備力」を総点検し能力を高めることが大切である。


4.「情報力」はパソコンの活用度でわかる

 最近は小さな会社にまでパソコンが浸透してきているが、情報力の代名詞がパソコンであり、会社に何台有るか、また何人に1台の割合であるのかでその会社の情報力が推測できる。
 しかし一方では、新しいシステムを3,000万円かけて導入したがうまく動かないために、以前の古いシステムに戻したという会社もある。パソコンをうまく使いこなせずに悪戦苦闘しているのは、導入準備段階での活用上の検討不足が原因であることが多い。
 パソコンの活用面では、会計処理やCAD、そしてEOSなどの受注管理や生産管理面での活用はあたりまえになり、インターネットを活用しているか、ホームページは持っているか、ネットワークを組んでいるかなどが話題になっている。しかしこれからは、このような業務や事務のスピードアップと効率化のためのパソコン活用だけでなく、戦略的な活用が必要である。
 戦略的な活用とは、会社の進むべき方向の意思決定をするときに判断資料や判断基準を提供してくれる使い方で、判断する時の材料をデータベースとして蓄積し、必要に応じてそのデータをわかりやすく加工して経営者や管理者に提供するシステムである。
 その材料には、景気の変動や公共投資といったものから、同業他社の状況、技術動向、消費傾向、そして海外情報などがあり、どの情報が自社にとって必要なのか、またその情報をどのように加工して経営判断をしていくかということを検討して情報の種類を決める。
 情報源としては、インターネット、新聞・雑誌・専門紙、取引先などがある。また自社の社員からさまざまな情報を入手し、その情報をうまくデータベース化することも大切である。


5.「資金力」の根源は財務の安全性と経営力

 資金力とは運転資金や設備投資などに必要な資金を調達できる力で、財務の安全性と総合的な経営力が資金力の根源である。
 しかし、これらは一朝一夕でできるものではなく日頃からの経営努力のたまものである。
 財務の安全性の確保では、まず徹底的な遊休資産の処分を行う。
 バブルの時代に買っておいた土地や建物はかなりの損失が出るが、持っておいても損益計算書には出ないだけで損失になっている。
 そして使わなくなった設備を処分する。リースであれば解約する。費用的には得はないかも知れないが、少なくともそれが占めていたスペースが空き、他に活用することができる。
 次は、材料や中間仕掛品、製品在庫を極端に減らすことである。
できれば「“0”にする」といった意気込みで徹底的に削減してみよう。このような在庫は現金が眠っている上に、製品の生産中止や劣化などで在庫の目減りが必ず発生する。年間売上の20〜30%もの在庫を抱えていて、その在庫を維持するための運転資金や利息支払いに四苦八苦している会社もある。
 そして徹底的な経費削減である。事務所・工場で使われている電気・水道・重油…などに着目して徹底して削減する。また役員からの率先した給与引下げも、経営成績の状況によっては必要である。
 資金力の根源であるもう一方の総合的な経営力とは、製品や技術の開発力、優れた経営者と社員、先を見た経営計画などで、将来の利益を生みだすもとになり、これが本来の資金力の根源である。
 総合的な経営力の結果が利益と財務の安全性を生み、それが資金力の強化になるといったイメージで経営改善に取り組むことである。 


6.社長が作る「企業体質」

 企業体質とは組織を動かす原動力であり、会社経営に直接的に影響するという意味で重要な経営資源であるが、漠然としている。
 あるオーナー社長は年商が30億円を越して仕事の混乱が目立ちはじめたため、業務を円滑に進められるように組織を作り変えた。
 今行っている仕事とこれから必要な仕事を分析して新たな組織を作って人を当てはめ、さあこれからとなった。しかし社長が今までと同じように担当者に直接指揮命令をするためにかえって組織が混乱し、もとの組織に戻ってしまった。まず最初に、指揮命令は社長がすべてするといった企業体質を変える必要があったのである。
これは一例だが社長が作る企業体質には次の3つがある。
@ 誰が物事を決定できるのかで、どんなことでも社長しか決できないのか、それとも権限がうまく委譲されているかである。
 もちろん責任を伴う権限の委譲は当然であるが、委譲内容が明確化されてその比率が高いほどよい体質である。
A 物事を検討するときに意見を出せる雰囲気かどうかである。社長は「何でも意見は聞くから出せ」といっているのに、社員は「意見を出しても反論されるだけ」「どうせ採用されないと思っているのか、本当に意見がないのか、社員は黙っていることが多い。社員から積極的に意見が出るのがよい体質である。
B 失敗を許せるかどうかである。真剣に考えても失敗することは誰でもある。会社では社長が一番真剣に考えて、一番多くの失敗をしているのかもしれない。しかし失敗するからより真剣になり結果的に成功するのである。失敗を恐れないでどんどん新たなことに挑戦していくのがよい体質である。


7.「人」の増減・構成・移動に注目する
 
 会社を取り巻くいろいろな環境(経営環境)の中で、それぞれの会社はうまく環境に合わせながら生きている。
 もちろん会社が環境を変えていくように見える場合も見られる。
 会社が消費を作り出すとでもいったほうがよいだろうか、たとえばテレビゲームがある。子供から大人まで大流行しているが、これは現在の社会環境の中での一時的な現象であり、これから20年もテレビゲームが続くとは考えられない。これからの社会環境の変化に合わせたもっと変わった子供の遊びが出て来るにちがいない。
 このように会社の経営に影響を与える経営環境の中でまず着目するのは、人口の増減やその年齢構成、また国内および国境を超えた人口移動などの「人」に関することである。
なぜなら、すべての製品は最終的には人によって消費され、人のいないところには消費は生まれないからである。
 最近の50年間でわが国の出生率は3.65人から1.42人に60%も大激減したため、子供が少なくなってきた。その結果、少ない子供を過保護的に大切にしたり贅沢をさせるようになり、それに適合した高級玩具や子供服が売れるている。しかし一方、大学受験をする子供が少なくなり大学の競争率が低下し、いずれ1を切って誰もが大学に入れるようになる。だから予備校や進学塾が苦戦している。
 また医療の進歩で老人が増えてきて、老人対象の製品を作ったりサービスを提供する会社が繁盛している。
 また今後過密化した都会から地方へ、行政や企業の移動が予想され、これに伴い人の移動が激しくなり多種多様の製品が生まれる。
 このような人の変化を読んで製品戦略を見直すことが大切である。


8.人が「求めるもの」を察知する

 人は個人・集団を問わず、必ず今よりよい方向の生活を目指した行動を行う。すなわち「おいしい物を食べたい」「よい服を着たい」「快適な住居に住みたい」「楽しい事をしたい」など、人間の満足感をより高める「快適性」を常に求めている。
 一方、マズローは欲求五段階説で、人は「生理的欲求」→「安全の欲求」→「社会的欲求」→「自我の欲求」→「自己実現の欲求」というように、より高次元の欲求を求めて行動するといっている。
 そうすると前記のような「快適性」以外にも、「安全に暮らしたい」「病気はしたくない」「仲間と一緒にすごしたい」「人に認めてもらいたい」「さらに自己を超越した精神的なくつろぎや満足感を持ちたい」など、人が求めるものには大きな広がりがある。
 自社の製品が、このようなさまざまな欲求をどの程度満足させられるのかがポイントである。当然、今作っている製品は何らかの欲求を満足させているのは間違いないが、どんな満足をどの程度与えるのかを明確にし、それをさらに強調する製品開発を目指せばよい。下請企業ならば親会社に納めている製品が最終どのような製品になって消費者に使われているかがポイントである。
 ところで、消費者の欲求は「消費者のおかれた環境」で大きく変わる。ある日突然昨日までのブームが去り、新たな欲求を求めたりする。ただ受注があるからといって闇雲に生産し続けているだけではその製品はいつかは飽きられてしまう。
 今は強く欲しいと思える物がなくなってきていることはまちがいない。そんな時こそ一歩先を読んだ満足感の源、新たな欲求の対象を見据えた製品開発が必要である。


9.「地球環境」はこれからの大きなテーマ

 地球環境の悪化が大きく叫ばれている。以前は公害問題という地域が限定された局所的な環境悪化であったが、今は地球の温暖化、砂漠化、オゾン層の破壊、またダイオキシンやPCBなどの環境ホルモンなど、世界的・地球的な規模の環境問題に拡大している。
 このような地球環境の悪化を食い止めることは、これからの人類の生存にかかわることであるから、大きな課題である。
 ビジネスとしても真剣に考えて、そのような環境悪化に影響を与える製品に関係している会社なら、それを極力押さえるように技術開発をしていくことである。たとえば自動車や焼却炉では排気ガスの有害物質を減らす研究や技術開発が、プラスチック製品ではリサイクルが、電気製品では省エネルギー化などが進んでいる。
 また環境の悪化を食い止めるだけでなく、環境をよい状態に復元する製品にもチャレンジすべきである。たとえば空気中の二酸化炭素を取り込む装置、土壌の改良装置、湖沼の水質良化装置の開発など、これこそ本当の環境ビジネスといえる。 
 さらにこのような環境の悪化を防止する製品に加えて、悪化した環境の中でもその環境に影響されず、人類が生きていくことができる製品の開発が必要である。たとえば有害な紫外線から身を守るクリームや衣服、有害物質を含まない食品、また環境ホルモンを中和する薬、砂漠化を防止する水分発生器、清浄空気再生器などいろいろな製品が考えられる。
 地球環境は全人類が依存している生存条件で、これにかかわるビジネスはあと10年もすれば非常に大きなウエイトを占めるようになる。自社の長期経営計画の検討テーマに加えるによい時期である。


10.「国際環境」の変化をマクロで読む

 毎日の円相場や株式の変動とそれに伴う世界経済は、アメリカやロシアや中国の挙動、中近東や各地での紛争、EU(ヨーロッパ連合)やアジアの経済情勢、さらに核開発競争などの国際的・複合的な出来事の中で連動して、一刻も休むことなく急速に変化している。
 これはインターネットに代表される情報のネットワークが進み、世界的な規模での情報交換が瞬時にできるようになり、情報についての国境がなくなりつつあることが大きな原因である。
 日本の大企業はこのような国際化に積極的に対応するために、日本で作った製品を海外に輸出するだけでなくアメリカやヨーロッパやアジアに工場を作ったり、また世界の各国から材料を輸入している。3年前の円高の頃は、各企業では海外調達率といった目標が設定され、材料や部品を世界の一番安い国から調達しようとした。最近の円安でその傾向は少しトーンダウンしてきたが、それでも世界的規模でのビジネス展開は着実に進んでいる。
 そんな中で、日本の中小企業も大いに世界に出て行くべきである。
 今はインターネットという情報収集やPRの手段がある。ヤフーやインフォーシークなどの情報検索のページを活用すると、世界各国の会社のホームページがインターネットで何万と見れる。また今の若者たちの発言もたくさん載っていて非常に参考になる。
 毎日10分でよいからインターネットで情報収集することを実行するとともに、自社のホームページを作って情報を公開してみよう。
 多くの企業からいろいろな形で情報が飛び込んでくるが、翻訳ソフトがあるので海外の情報もそう苦労せずに読める。そうしているうちに国際環境を肌で感じ、かつ経営に反映できるようになる。


11.自社に関連する「技術情報」を収集する

 人類の進歩は科学技術の進歩の歴史である。火を発見したことから始まり、天文学や数学が進歩し、やがて蒸気機関が発明されて産業革命が始まり物の生産力が急激に増えた。またライト兄弟によって飛行機が発明されて世界は小さくなった。そしてさまざまな電気製品が各家庭に普及し原子力発電の電気で利用され、その結果生活のために必要な掃除・洗濯・炊事などに必要な時間と労力が軽減され、そして働く女性が増えてきた。
 もちろん科学技術の進歩が地球環境を悪化させる原因にもなっていることも事実であるが、科学技術を否定した生活は今では考えられない。また、最近ではクローンという人為的な遺伝子の動物実験が話題になっているが、10年もたったら日常生活のいろいろな場面に登場してくるだろう。また情報技術や素材技術、加工技術なども日進月歩しているが、このようなとどまることを知らない科学技術の進歩は見逃すことはできない。
 日本の大学や各種研究機関でもいろいろなテーマで研究をしているが、これなどもインターネットで公表されている内容については情報をとることができる。ただし、日本の研究水準は、基礎研究や先端科学技術分野では欧米に遅れをとっているため、国際的な視野からの情報収集が必要である。
 もちろん自社に必要な、また関連する技術について情報収集すればよいので、そう難しく考えることはない。
自社に関連するどのような技術テーマが研究されているのか、その概要だけでも入手してみると、自社の技術力をどのような方向で伸ばしていくべきか、また取り組むべき課題は何かが見えてくる。


12.需要と供給で決まる「景気循環」

 景気は周期的によくなったり悪くなったりするが、その基本は需要と供給の関係であり、景気循環にはその周期をもとにしていくつかの種類がある。
 第1は、コンドラチェフの波とよばれ、48〜60年の長期周期をもつものである。過去の景気の山として、第1の波が1817年頃、第2の波が1875年頃、第3の波が1920年頃であり、その延長から考えるとそれ以降の景気の山は1970年頃と2020年頃である。このコンドラチェフの波から見ると、1998年の今は景気の山のちょうど中間で景気の谷からちょうど抜け出した時期に相当する。
 このコンドラチェフの波が発生する原因は、鉄道や蒸気機関の普及、自動車の普及といった新技術、新製品の開発にある。
 第2の景気循環は、主循環ともよばれるジュグラーの波である。これは、設備投資とその老朽化にともなう更新投資によって生じるものと考えられ、ふつう景気循環というときはこれをさすことが多い。ジュグラーの波の周期は、およそ7〜10年とされている。
 第3に、キチンの波という短期循環がある。これは、およそ3〜4年の周期をもつ循環で、在庫の増減にともなって生じる需要と供給が原因とされており、在庫循環ともよばれている。
 また天候にも大きく左右され、猛暑が続くとエアコンやビールなどの需要が高まり爆発的に売れるが、周期的なエルニーニョ現象が天候に大きく影響するといわれている。
 以上のような、新技術や新製品による景気の変動、設備投資による変動、在庫の増減による変動、天候による変動などが世界的な規模で景気に影響を与えるのが現在の経済環境である。


13.ライバル会社の挙動が「業界環境」

 会社にとって一番身近な経営環境が業界環境である。業界とは同業の集合体で、ライバルで生存競争を凌ぎあっている仲間であるが、この業界内部で起きていることから直接的に大きな影響を受ける。
 だからこのライバルたちの挙動には注視していないといけない。
 今どのような経営をしているのか、たとえば設備投資は何を計画してどの程度の規模か、さらにはどのような研究開発をしているのか、また生産能力はどのくらいでいくらの稼働率か、そして損益分岐点や安全率はいくらかなどである。
 これらはもちろん合法的に情報収集することが絶対条件である。
ライバル会社のパンフレットや会社案内、決算報告書を集めたり、また得意先や関係者からライバル会社の状況を聞き出したりすることは比較的簡単である。
 また、ライバル会社の工場の門を1日中見ていると、材料にどのようなものを使い、どのくらい使用され、製品がどのくらい出荷されているか、また従業員は男女何人で平均年齢はどのくらいか、残業をしているかどうかなどの工場の現況がある程度わかる。従業員の話している内容がわかれば企業体質まで推測することができる。
 また設備投資についても、自社に取引のある設備メーカーや取引銀行からある程度は聞き出すことはできる。
 こうして仲間であるライバルの挙動を知りながら、遅れていて追従しなければならないテーマ、自社が先行しているテーマなどを洗い出して自社の経営計画に反映していくことが望まれる。
 もちろん他社の物まねだけでは業界のリーダにはなれないが、他社に打ち勝つ経営戦略を打ち出す情報として活用する意義は大きい。


14.自社の「強みと弱み」および「機会と脅威」

 1章から5章までに書いてきた経営実績や経営資源、また経営環境について自社の実態を洗い直すと、「強み」や「弱み」また「機会:ビジネスチャンス」や「脅威:不利な点」を分析することができる。
 分析というのは複数の事実を関連付けることができるということで、たとえば、「決定が遅いという企業体質が設備の更新や改造の遅れに影響し、A製品の原価が高くなっている」「B製品の販売量が低下しているのは、ライバル会社がX 地域の営業所を強化しているからである」といった具合にである。
 しかしその分析を社内の人がするのは、自社の実態を部分的(自分の担当部署中心)、かつ断片的(自分にとって印象の深いことが強調される)に知りすぎていて、なかなか困難である。
 他人の子供のよい点や悪い点はすぐにつかめるが、自分の子供についてはわからない(希望が入るためによい点が強調して見える)のと同じであるから、できれば信頼できる第3者のコンサルタントを活用することもひとつの方法である。
もちろん、このような分析は過去から今までの過去の事実に基づいて行うため、これからの将来もその延長で同じように推移していくということではない。
 これからの会社の将来は、過去からの経営の積算に対して、これからの自社を取り巻く環境の変化と他社の経営の実態を織り込み、自社をどのように経営改革していくかで決まる。
 そのときに自社の「強みと弱み、機会と脅威」は、過去からの経営をどのように変えていけばこれからの社会に勝ち残っていけるか、というヒントや材料を提供してくれるため非常に大切である。


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ちょっと休憩 「表裏一体の原則」

 この世界の物事には、「明るいと暗い」「高いと低い」「白と黒」「上手と下手」「金持と貧乏」などのように必ず正反対のことが存在する。
 これらの反対のことは、どちらが正しい悪いと割切れることでない。
 例えば本を見るときは明るい方がよく、寝るときは暗い方がよい。
また健康であるがゆえに多くの活動ができるし、病気があるから体をいたわることができる。病気がなければ我々人間の寿命は もっともっと短いにちがいない。
 このように物事を検討する場合には、反対の状態についてその大切さや必要性を考えるとその物事の本質が見つかり、結果として自分の価値観を充実させたりよい結果を得ることができる。
 物事の2面性を考える表裏一体の原則は、仕事や日常生活をうまく進める上で大切な考え方である。


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