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書籍:利益のあがる勝ち残り工場経営
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4章 原価と改善ポイント  &ちょっと休憩 「忙しさは能力に反比例する」


1.利益式で利益3倍化を掘り下げる

 企業が稼ぎ出す利益の大きさは、次の式であらわされる。
   利益=販売数量×(売価−原価)
たとえば販売数量を1,000個、売価を1,000円、原価を970円、利益を30円(利益率は 30円÷1,000円=3%)とすると、
 現在の利益=1,000個×(1,000円−970円)=30,000円
この利益を3倍の90,000円にするには次の3つの方法がある。
 @ 販売数量を3倍(1,000個 ⇒ 3,000個)にする
売価と原価が今のままで販売数量が3倍になれば利益は3倍になるが、販売数量を3倍にするには売価を下げて需要を増やし大量に受注することが必要である。もちろん規模の利益(多量生産するほど生産コストが安くなり原価が下がる現象)が働くから、売価を下げても1個あたりの利益30円は確保できるだろう。
しかし販売数量を3倍にするには、大規模な生産設備の増強や販売網の確保が必要で、実現に長い時間がかかる長期的な課題である。
 A 売価を6%値上げ(1,000円 ⇒ 1,060円)する
価格破壊やコストダウンがあたりまえになってきている昨今では、多少の品質向上や機能向上では値上げなどできない。製品はよくして値段は下げないと売れない時代である。もちろん値上げができるように技術力を高めて製品に反映させていくことは絶対に必要であるが、少し時間がかかる中期的な課題である。
 B 原価を6.2%低減(970円 ⇒ 910円)する
今まで徹底的に原価低減は進めてきて改善の余地はないといわれる管理者が多いが、外部の目から見るとまだまだ原価低減のネタはある。一番短期的に実現が可能な方法である。


2.原価とその内訳

製品を作るためには、材料費、人件費、経費の3つの原価が必要である。
材料費は、製品を構成する材料や購入部品の費用で、例えば「おかき」を作っている会社では、米、おかきに入れる黒豆・ごま、また味付けのための調味料などの費用である。
 一般に原価に占める割合が40〜50%程度と一番大きくて原価低減の真っ先の対象になり、VA(Value Analysis)やVE(Value Engineering)といった手法で改善が進められる。
人件費は製品を作るために必要な人にかかる費用である。正社員やパート、アルバイト、派遣といった種類があり、また残業費も含まれる。工場の機械化の程度により大きく変わるが、一般的には材料費についで多く、20〜30%程度を占める。
労働生産性を高める(1人当たりの生産量を増やす)改善により、この人件費を小さくすることができる。
経費とは電気・ガス・重油等の光熱費、外注費、賃借料、保険料、減価償却費などで、原価の20%程度を占める。
このような原価について自社の内訳を知っておくことは、原価低減を進める上で大切なことである。税務署に毎年提出する製造原価報告書という書類に書かれて残っているはずである。
その原価の種類と年間の金額をパレート図にあらわすと非常に見やすいが、このときパレート図の右端に利益(赤字会社ならば損失)を書きこむのがポイントである。このパレート図を見ると、利益はいろいろな原価に比べたら非常に小さくて、利益を増やすことはなんでもないように見えてくる。


3.材料費削減対象の設定方法

 原価の中で一番大きな比率を占める材料費の削減は、利益を増やすために取り組む効果の大きい課題である。
その取っ掛かりは、どの材料費を減らすかという削減対象の設定であるが、次の2つの方法がある。
ひとつは「材料からのアプローチ」で、使っている材料について過去1年間の購入伝票で使用量・購入単価・購入金額(使用量×購入単価)・使用製品を洗い出し、購入金額の大きい材料から品数にして20%(一般的に購入金額の60〜70%を占める)をリストアップし、それらの材料を削減対象に設定する方法である。
この方法は、会社の規模が大きく組織が事業部制になっていたり、また生産している製品が大きく異なる場合、さらに共通材料の比率が大きい場合などや、現場主体の改善に適している。
ふたつ目は「製品からのアプローチ」で、過去1年間の生産実績で製品別に生産量・売価・生産金額(生産量×売価)を洗い出し、生産金額の大きい製品から品数にして20%をリストアップし、その製品の材料を削減対象に設定する方法である。この場合は過去の実績に加えて今後の受注予測をしておく必要がある。
この方法は生産している製品が同じ種類のものであったり、プロジェクト方式で取り組む改善に適している。
どちらの設定方法にせよ削減の目標値は、設定した材料についてそれぞれ15〜20%程度が望ましい。大きすぎる目標値と思えるかもしれないが、この程度でないとかえって大胆な改善アイデアが出ずに、改善は進みにくい。この目標達成で材料費全体では3〜5%の原価低減になり、利益率は倍増する。


4.材料費を削減する @ ロス管理の徹底

材料費を削減するターゲットと目標値が決まったら次はそれを達成するための改善を実施するが、その進め方のひとつに「ロス管理の徹底」を行う、現場主体の改善がある。
ロス管理とは、ある1ヶ月間で生産した製品数量から換算して理論的にはいくらの材料が必要であったか、またそれに対して実際にはどのくらいの材料を使ったか、その差(ロス)はいくらで、どの工程で、どうして発生したのかと突き止めて改善する方法である。
@ ターゲットに設定した材料を使っている製品をリストアップ
 し、製品単位当りに必要な材料の理論値を計算する。このとき
 は歩留まりや不良率は考慮しない(歩留まり100%・不良率0%)
 で理想的な必要量を求める。
A ある1ヶ月間の製品の生産量に、@で計算した製品単位当り
 に必要な材料の量をかけて、その月に必要とした材料の理論必
 要量(理想的に生産できた場合の必要量)を計算する。
B その月に実際に使った材料の使用量を求める。使用量は実地
 棚卸しをした数字であればベストであるが、毎月実地棚卸しを
 していないならば帳簿上の使用量を使ってもよい。
C 材料別に、Aの理論必要量とBの実際使用量の差を求め、そ
 の材料単価を掛けて理論上の損失金額を出す。
 ターゲットに設定した材料の理論上の損失金額合計は意外と大きく、その数字を見て材料費削減のサブテーマとサブ目標値を設定し、改善活動に取り組んでいけばよい。実際の改善は理論損失金額の発生工程や発生作業、発生原因を分析することからはじめるが、こうにして徐々に現場主体の改善は進んでいく。


5.材料費を削減する A 材料の再設計

 ロス管理による改善とともに、「材料を再設計」するプロジェクト方式(製造部門、購買部門、設計部門などがプロジェクトを組んで取り組む)の改善も併用した方が効果は大きい。異なった立場・観点からの発想が出てきて相乗効果が発揮されるからである。
生産金額の大きい製品から順番に、次の着眼点で改善する。
@ 形状・構造・加工方法を変える
A 他の材料に変える
B 仕入先や仕入方法を変える
形状・構造・加工方法を変える着眼は材料の使用量を減らすのが目的で、その材料を少なくできないか、小さくできないか、薄くでいないか、材料ロスの少ない加工方法はないかなどの検討を行う。
たとえばボルト止めの場合、本数は減らせないか、短くできないか、細くできないか、接着剤ではどうかなどである。また加工方法では機械切削がよいのか、プレス加工ではどうか、冷間鍛造はどうか、レーザー加工はどうかなどを検討する。
他の材料に変える着眼はその材料の機能(役割)を満足しながら安い材料に変えるのが目的で、例えばステンレスをやめてプラスチックにする、国産をやめて中国産にするなどがある。
もちろん当面の材料費だけでなく、材料の変更に伴う加工費や経費の変化、また廃材処理なども考慮することが必要である。
仕入先や仕入方法を変えるのは安く買うのが目的である。
無理を聞いてくれるとか、便利だからといって従来から使っている仕入先の変更にしり込みする管理者が多い。新たな仕入先に変更すれば、意外と安くてサービスのよいことが多い。


6.人件費は少なく給料は高くする

原価の中で材料費の次に大きい比率を占める人件費の削減には注意点がある。それは人件費を削減するのは社員で、削減されるのも社員であり、いいかえれば自分で自分の首を締めるようなもので、うまくしないと社員にはマイナスの動機付けになるからである。
だから「総人件費は少なく、1人当りの給料は高くする」と、まず宣言するのである。これにはほとんどの人は納得する。
なぜなら総人件費の削減は自分だけのことではなくて全社員を含めた話であり、1人当りの給料は自分のことだからである。
だからこの宣言により、全社員がライバルになったとそれぞれが感じ、これからは競争して会社に利益をもたらさなくてはいけないという意識が生まれる。このような競争意識と利益意識が会社の中に芽生えることは組織の活性化にとって非常によいことである。
今までの日本的経営は集団家族主義で、給料に大きな差をつけない年功序列の仲良し集団を目指していた。
仕事のできる人ができない人をカバーし、またできない人にもそこそこ働いてもらうことで、平均的に会社の効率は高かった。
仲良し集団は、その集団の人が入れ替わらない場合にはよいまとめ方かもしれない。しかし昨今のように転職が当たり前になり人材の流動化が進んでくると、できる人には高い給料で最高に能力を発揮してもらい、できない人は適切な仕事や会社にかわってもらう方が会社が戦力化するし、本人にとっても幸せである。
会社は他のライバル会社と生存競争をしている。その会社間のあたりまえの競争意識を社内に持ち込み、社内で生存競争を働かせる方針が労働生産性を向上させ、組織を活性化していく。


7.人件費を削減する @ 残業の削減

労働生産性を高めて人件費を削減するためにまず着眼することは、残業を減らすことである。単なる残業費の削減という目的だけではなく、一部署の残業が他部署の労働生産性を落とすからである。
例えば購買課の残業が非常に多いとしよう。それは購買課が残業して資材調達をしなければ生産が混乱し、納期遅れが多発するからである。つまり製造部門に対してタイムリーな資材供給ができていなくて製造部門の生産性を落としていると考えられる。
また製造部門のある工程の残業が多いと、前工程は仕掛品が山とたまるため作業を遅らせ、後工程は手待ちになり生産性は落ちる。
このような他部署への波及があるため、残業が多い部署の仕事や作業を改善して残業を減らせば、会社全体の労働生産性は向上する。
残業ご苦労様とか、残業カット、サービス残業という表面的な対策はこれまでにして、残業が会社全体に与える本質的な非効率性に目を向けて改善を進めることが必要である。
もちろん残業が減ったら給料が減るといった苦情は出てくるが、長期的には本給を上げる方向で対処することが望ましい。
残業でもうひとつ注意することは、社員は残業が多いことは自分のやるべき仕事が多い、つまり自分は会社にとって重要な社員であると勘違いしやすいということである。
残業をするのは仕事に対しての処理能力が少ないからであるから決して誉められた状態ではない、いや危惧すべき状態なのである。
この点を会社の中で意思徹底していかないと、効率よく仕事をする人が暇と見られ、ちぐはぐなことになる。仕事は全員が定時に終わることが一番効率的な状態であることを理解しよう。


8.人件費を削減する A 仕事のトラブル防止

人件費を削減するために次に着目することは、仕事のトラブルをなくすことである。仕事のトラブル処理にかけている時間は非常に大きく、まったくの無駄である。
たとえば作業の現場では、発生した不良品の手直し処理にかなりの時間を使っている。しかも不良品処理は正規の作業になっていて「今日は不良が少なく暇だった」というとんでもない声も聞かれる。
またクレーム処理や納期遅れ対応に必要な時間も非常に大きい。
事務作業でもトラブル処理は多い。伝票間違い、電算機の入力ミス、顧客からのクレーム処理…と数えあげたらきりがない。
しかし、このようなトラブルが表面化してくるのはほんのわずかである。作業現場に不良処理工程があるように、事務のトラブル処理もそれが日常の仕事になっていて、潜在化してしまっている。
しかも、このようなトラブル処理に必要な時間は正常な作業の3倍以上はかかる。たとえば注文伝票の数量の記入間違いによる納品が、受け取り検品で発見され、赤伝票が発行される。(発見されなければ伝票通りに検収され、現場の倉庫に眠るか、最終は処分されることになる。)その赤伝票は起票、捺印、記録、入力などがされて処理が終わり最終保管され、また現品は一時保管や返品作業、取引先への連絡などが必要で、これらに多くの時間がかかるのである。
だからトラブルが発生するのは仕方ないとしても、それが2度と発生しない対策をすることは非常に大切なことである。
社員、特に管理監督者の中にはトラブル処理こそ自分の仕事だと張り切っている人がいる。トラブルを起こさないようにすることが自分の役割であるという意識に変えてもらうことである。


9.人件費を削減する B 社員の多角化

最近の職場で働く人は多種多様である。正社員、派遣社員、パート社員、アルバイト、期間工、またパート社員にも8時間パートや6時間パート、3時間パートなどいろいろな条件の人がいる。
特に製造現場では以前は男性主体の職場が多かったが、今は女性がいない職場はほとんどない。逆に女子化が進み、女性のほうが多い職場がかなり増えてきた。また女性が職場のリーダーになって男性を指示している職場もよく見受ける。
生産性向上やコストダウンのグループ活動をしている会社で、グループリーダーに女性がなっていることもある。
また女性リーダーも期待にこたえてよく頑張り、男性リーダー以上に大きな成果を残し、素晴らしい発表を聞くことが多々ある。
このような社員の多角化は仕事面とともに人件費面でも大きく会社の業績に貢献している。
必要な日に、必要な時間働いてもらえ、しかも福利厚生費や賞与が正社員に比べ少なくて済むため人件費は安くなる。また働く人にとっても自分の都合にあわせて働くことができるメリットは大きい。
この場合のポイントは、「仕事」と「教育」の標準化を徹底することである。「仕事」の標準化とは、誰がしても同じ結果が出るように作業を簡素化・定型化・文書化することである。しかも短期間に仕事がマスターできるように仕事そのものも改善する。
また仕事の標準書にしたがって、実際にやってみせ、やらせてみて、質問させるなど、新人に教える「教育」の標準化も大切である。
上手に標準化しないとその職場の管理者は大変である。場合によれば自分が常時補助しないとミスが多発することになる。


10.経費を削減する
 @ 経費の金額表示

経費には、電気・ガス・重油などのエネルギー費や修繕費・外注費・消耗品・運送費などのように現場の改善工夫で削減でできるものと、賃借料・保険料・建物や機械の減価償却費などのように固定されていて削減できないものがある。
エネルギー費の低減では、まず使わないときはこまめに切るようにすることで、電気では必要のない照明は消す、使っていない機械の電源は元から切る、モーターの空運転は止めるなどであり、またガスや蒸気なども不要なときはこまめに止めることが必要である。
作業場全体の照明がこうこうとついているのに作業はホンの一部でしか行われていないとか、昼休みで誰もいないのに電気がついていたり、また製品加熱用のバーナーが製品を過熱していない時にも点火されていたりといった光景をよく見受ける。
また水もふんだんに使われている。特に食品工場の床は水浸しのことが多い。清掃に手っ取り早く使えるからであるが、このような場合、清掃する部分を最小限にする工夫が必要である。
設備購入時からついているカバー、よく考えれば何の役にも立っていなのに、生産品種の切替時にはいつも取り外して水で清掃洗浄し、そして取りつけていたりする。水と作業時間の無駄である。
このような現場の工夫でできる経費の削減をするためには、使っている経費の損失を誰が見ても簡単にわかるように金額で表示することである。たとえば機械を10分間空運転すると1ヶ月に20,000円の電気代がかかるとか、水1トン400円、荷造り用のダンボールケース1枚70円といったようにである。お金に換算した損失額の大きさを知らないために、無駄に使われている経費が非常に多い。


11.経費を削減する
 A 外注先の見直し

 外注費用を削減する時に注意することがある。
 外注先にコストダウンの要求をする場合、品質管理が徹底していればある程度安心であるが、粗悪な材料を使われたり、手抜きの作業をされて不良が多発しないようにすることである。そうならないようにコストダウン要求と共に、品質基準や品質保証工程の確認、場合によっては品質指導が必要になる。
しかしこのようなきめ細かい外注管理は、コストアップの要因になる。外注費用は表面的な数字以外に多かれ少なかれ隠れた費用がかかっていて、外注先の数が多い場合はその費用も考慮して外注先の絞り込み(削減)を検討することが必要である。
まず外注先と外注内容、支払い金額、外注品の品質と納期、コストダウンの経過などについて今までの実績一覧表を作る。実績には不良率や納期遵守率をパーセントやppmの数字で表す。
そして支払い金額が少なく優良な会社、つまり品質不良がなく納期遵守率の高い外注先は、仕事量を増やしてコストダウンの要求をする。一方、問題の多い会社は切り替えていくようにしたい。
また「渡り鳥外注」といって、材料をA社に支給して加工され、それがB社に渡りさらに加工され、次にC社で加工されて自社に納品されるケースがある。物流費や管理コストが非常に高くつくうえに品質・納期面でも問題が多く、改善したい外注形態である。
これ以外に外注作業の社内取り込みも検討したい。外注に出している加工で、将来的に考えて社内に育てたい技術があれば、多少の設備投資を伴ってでも内製化することである。不景気な今は時間的にも余裕がありそのチャンスである。


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ちょっと休憩 「忙しさは能力に反比例する」

 「忙しい、忙しい」と、人に会うと口癖のようにいう人がいる。
忙しいということは自分にはゆっくりとしている暇がない、それほど自分にはやるべきことが非常に多い、つまりそんな自分は優秀な人であることを表現したいようにも受け取れる。
 この人の頭には、忙しさ=仕事量÷時間(一定)=優秀さ の公式が描かれているに違いない。
 しかし私は、忙しさ=仕事量÷能力(可変)=要領の悪さ つまり忙しさとは能力の低さを意味すると考えている。
 このように定義したら、忙しいという言葉は使わなくなるだろう。
時間活用の原点は、時間があるかどうかより、それをやりたいと思うかどうかである。やりたことには知恵が働き工夫が生まれ、時間は一定にもかかわらずほとんど何でもできてしまうものである。


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