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書籍:利益のあがる勝ち残り工場経営
SERVICE&PRODUCTS

2章 製品と改善ポイント  &ちょっと休憩 「マイナス言葉お断り」


1.製品別に限界利益率をチエックする

 利益を増やすためには、まずどの製品がいくらの利益をあげているかを知る必要がある。しかし中小企業では多品種少量生産と人材不足のため、製品単位の原価分析がされていないことが多く、製品別の利益はなかなかつかみにくい。
そこで、できるだけ簡単に製品別の利益をつかむために、限界利益率を求めてみる。そうすると、会社の利益に貢献している製品と会社の利益を食っている製品を見分ける事ができて、収益向上のために必要な改善方策が見つかる。
  限界利益 =売価−(材料費+購入部品費+外注費)
  限界利益率=限界利益÷売価
 売価から材料費や購入部品費そして外注費などの外部へ直接出ていく費用を引いたものが限界利益で、限界利益を売価で割ったものが限界利益率である。限界利益は人件費や営業費、諸経費、利益などの源泉になり、限界利益率が高い製品ほど儲かる。  
業種や製品によって異なるが、一般的には限界利益率が30〜40%以上でないと利益が出ないばかりか人件費がまかなえなくなる。
 この限界利益率を、製品別に計算してみると大きなばらつきがある。たとえばA製品の限界利益率は65%もあり利益に十分貢献しているが、B製品は20%しかない。またC製品は−5%で、販売単価よりも外部へ出ていく費用の方が大きく、売れば売るほど赤字が大きくなるといった状況が見えてくる。
 いろいろな原因で限界利益率が大きくばらつくが、全製品を限界利益率が高いグループ、中間のグループ、低いグループに3分割して、それぞれのグループ毎に収益向上の改善を実施してこう。


2.限界利益率が低い製品は生産中止する

 限界利益率と製品のグラフで、限界利益率が低いグループの製品は、売上高の大半が材料費や外注費として右から左へと外部へ流出し、利益として残るのは非常に少ないから、大胆に値上げをするか徐々に生産縮小を進めることが課題である。
 特に限界利益率がマイナスの製品は即刻生産・販売を中止すべきである。売価より材料費などのほうが高い製品があるなんて考えられないことであるが、数多くの製品を作っていれば個別製品の限界利益率管理をしていない限りありえることである。
 長年の値下げ要求や部品価格の値上がり、また外注費の値上がりなどが積み重なってこのような結果になってしまっている。
 このような限界利益率がマイナスの製品は材料費と外注費をたした金額より売価のほうが小さいから当然作れば作るほど損をする。いくら生産性を高めても、受注量を多くしても利益は出ない。生産性を高めて作れば作るほど、売れば売るほど損をするのである。
 限界利益率がマイナスとはいわなくても、低いグループの製品も損をしている可能性が大きい。
 その大きな原因は不良損失である。限界利益率が低い製品について、平均不良率、廃却率、手直し修正率を測定・計算してみる。
 もともと材料費の比率が高い製品だから、不良が発生して廃却処理になれば大きな損失になる。たとえば限界利益率が10%の製品はひとつ廃却すれば材料費である90%が損失になるため、単純に計算して9個製品を販売しても材料費が稼げるだけである。実際にはそれに必要な人件費や経費が必要なため、100個以上生産してやっと収支トントンだろう。


3.限界利益率が高い製品には理由がある

 限界利益率が高い製品は材料費などが低いため1個当たりの限界利益が高く、つまり儲けが大きくて少量生産でも利益を得やすい。
 だから積極的に販売量を増やすように営業力を強化していくことが大切であるが、なぜ限界利益率が高いのかを知っておくことが必要である。儲かる製品には儲かる理由がある。
 第1の理由は、競争相手が少ないことが考えられる。
その製品が機能的にまた生産・販売面で非常に優れていて、競合する製品が少ない場合は「言い値」で受注しやすい。
たとえば、「工業所有権(特許・意匠・実用新案)に守られている」「他社では加工技術がなく同じ加工が出来ない」「品質上他の会社は対抗できない」「生産リードタイムが他社より極端に短くてほぼ即納体制にある」「少量高効率生産体制が出来ていて、1個からでも効率よく作れる」などの理由で、今まで競争相手であった会社がこの製品から撤退したのである。
こういった場合は見積もり金額ですんなり受注できたり、あとあとの値下げ要求も少なくなるため、小まわりがきいて機動力が持ち味の中小企業がこれから目指してく方向である。
 第2の理由は材料費や外注費などの変動費が安い場合である。
その原因としては、「安い材料を使って製品を作る技術がある」「歩留まりが高く材料ロスが少ない」「資金力にまかせた材料の大量購入で安く仕入れることができる」「適切な外注指導により外注工場の生産性が高く不良が少ない」などがある。
 第3に相手の会社が気がつかないラッキーな場合もあるが,この場合はいずれ大幅な値下げ要求が来るにちがいない。


4.平均的な限界利益率の製品は原価低減で儲ける

 限界利益率が中間のグループ(かなりの製品数を占める)は、現在の利益を稼ぐべき主力製品であるため、徹底的な材料費削減による限界利益率の向上、製品品質や生産性の向上、また経費の削減などの総合的な原価低減を行い、他社に先んじて製品の価格競争力を強化していくことが必要である。
 当然今までもこのような改善は進めてきただろうが、固定観念を取り払い、今からスタートという新たな気持ちで取り組むと、いろいろな改善アイデアが沸いてくる。
 進め方で大切なことは対象製品の絞込みと推進体制である。
まず限界利益率が中間の製品(全製品数の約70%程度)を、生産金額の大きい製品からパレート図にあらわし、そして生産金額の大きいほうから10%の製品を改善対象として選ぶ。
この時点で全製品数の7%程度(売上高では約30〜50%を占める)に絞り込め、たとえば全製品数が1,000であれば70品種に、10,000であれば700品種になり、重点的な改善取り組みができるようになる。
まだ製品数が多いとお考えなら、さらに10品種に限定して3ヶ月の期間限定で進めて、その効果を見ながら対象を広げていこう。
次に推進体制は原価低減のプロジェクトを結成する。そのメンバーは製造部門、設計部門、購買部門、品質管理部門からそれぞれ適任者を1〜2名選ぶが、固定観念が働くことが改善の障害になるため適任者にはベテランよりもできるだけフレッシュな人がよい。
またリーダーは当該部門以外の人を選任し、組織上は社長直轄にする。このように最初の1〜2年はプロジェクトチームを作り活動をすばやく軌道に乗せ、改善成果を確実にモノにする。


5.製品のライフサイクルを知る

 ほとんどの製品、特に工業製品には寿命がある。
 この寿命には、練炭・火鉢・そろばん・真空管・トランジスタなどのように、より便利な暖房機器や電卓またスペースのとらない集積回路(LSI)などが開発された結果、製品自体の需要がなくなるケースと、タオルや靴下などの繊維製品やテレビやラジオなどの電気製品のように、開発途上国などでの海外生産が増加し日本では生産をしなくなるケースがある。
 前者は製品のライフサイクルといわれ、製品が誕生してから市場への導入期、売上高が伸びる成長期、競争期、成熟期、そして衰退期を迎えやがて市場から姿を消していく過程である。
 導入期〜衰退期のそれぞれの期間は製品によって異なるが、ほとんどの製品はこのライフサイクル上を動いている。短い製品だと1ヶ月で寿命を迎える商品もあるし、長いと10年以上も存続する。
もちろん計画的陳腐化戦略で故意にライフサイクルを短くして新製品の販売促進をすることもあるが、ほとんどの製品は改良や新用途開発によって延命化をしている。
 後者の海外生産の増加は、製品の高付加価値化現象による製造国の移転である。たとえば価格が100円で材料費が70円、付加価値が30円と低い製品は開発途上国で生産し、先進国ではその高い人件費を吸収するために、価格が同じ100円でも材料費が30円、付加価値が70円の製品を開発し生産するようになるからである。
 このような観点で製品のライフサイクルを検討してみることである。生産量が減少していく製品が多いと、将来苦戦を強いられることになるが、最近は製品寿命の短縮化が急速に進んできている。


6.主力製品にいつまでも頼らない

 自社の主力製品が製品ライフサイクルのどの位置にあるかで、その会社の盛衰が決まってくる。いくら優れた技術力や生産力を持っていたところで、その製品が衰退期に入ったり、海外生産の増加や逆輸入でなどで日本国内での生産が大きく減少したら、その企業はお手上げ(売上高の急激な減少やそれに伴う倒産)である。
 一般的に中小企業のほとんどは下請企業で、さらに特定の親会社からの受注依存度が大きいにもかかわらず、親会社の製品がどの製品サイクルにあるのか、また親会社の製品戦略などをあまり考えていないか、考えていても具体的な対応をとっていないことが多い。
 最近、自動車関係の部品の受注が急速に減少してきた2次下請けの会社がある。5年前までは売上高が上昇カーブを描いてきたが、その後伸びが低下して平坦になり、昨年あたりから急速に受注が少なくなってきた。原因はその部品が自動車に使われなくなったのではなく、自動車の国内生産台数が減少してきたからである。
 注文量が減ると値引き要求が大きくなるのは下請企業の宿命である。数年前までは主力製品で稼ぎ頭であったのが、これから2〜3年後には赤字製品に転落するだろう。もちろんその会社は必死で原価低減を進めてはいるが、いずれ追いつかなくなることは目に見えているため、これからの新分野進出を模索しはじめている。
 自社の主力製品(売上高が大きいまたは限界利益率が大きい製品や部品)をリストアップし、それらの主力製品の生産数量と売上高、そしてそれが使われている最終製品の年間生産量・生産金額の推移や海外生産比率をはじき出してみると、主力製品がいつまで自社の主力であり続けられるかが読み取れる。


7.5年後の製品を企画する

 現在生産している製品や技術だけに頼った受注量の増大、つまり現在の製品や技術の延長受注だけで将来も大丈夫だと考えている会社は少ないだろうが、新製品や新技術の開発にあまり力を入れていない会社をときどき見受ける。
 今の製品や技術が素晴らしいことや、現状でよく売れていてそこそこ利益が出ていることが理由かもしれないが、そのような会社からは今の忙しさは感じられる一方、将来の活気は想像できない。
 また、今の若者は会社についてよく勉強していて、どの業種が将来伸びていくか、また働きがいのある会社はどこかなどについて自分なりの考え方を持っている。だから現状維持に奔走していて将来のことをあまり考えない会社には、夢を持った優秀な若者は入社してこない。たとえ入社してもすぐに辞めていく。
 会社にとっての将来とは、自社はどのような製品や加工技術やサービスを顧客に提供し社会貢献していくかである。この点は経営者なら夢に出てくるくらい日夜いつも考えていなければならないくらい企業経営では大切なことである。
 それが明確でないと自社の将来ビジョンが作れず、また経営資源の重点集中化が図れずに成り行き経営になってしまう。
自社の経営資源や自社を取巻く経営環境を考えて、5年〜10年先に主力製品になっている製品をいくつか思い浮かべることである。 
 そして中長期の製品開発計画を作り推進体制を整えて、その計画の実行を通じてヒット商品の試作・生産・販売、また消えていくアイデア、さらには追加されていくアイデアのように動き出したとき、社内に新たな活気が感じられるにちがいない。


8.他社製品から学ぶ

 自社製品の限界利益率を高めたりライフサイクルを延命化するために、他社の製品から学ぶ点は多い。
 ひとつは、製品に新たな機能を追加したり、使いやすくしたり、品質を向上させたりして付加価値を加える場合である。
機能の追加とは、繊維製品なら抗菌処理や紫外線非透過処理を行なう、食品なら新しい食べ方や新しい包装を行う、エアコンでは暖房時に乾燥を防ぐ加湿ができる、太陽熱を利用して電気代が安いなど、その製品に新たな機能をプラスすることである。
 もちろん顧客が欲しがる機能でないとだめであるが、どのような機能をプラスするかを考えるときに他社の製品が非常に参考になる。
 参考にするのは類似製品だけでなく、製品に共通の要素を持ちながら使用用途のまったく違う製品も参考になる。
たとえばエアコンの類似製品とは他社のエアコンはもちろん、カーエアコンや電車のエアコンであり、使用用途のまったく違う製品の例としては、エアコンの共通要素は「熱」と考えて、熱に関係する電気冷蔵庫、ガスコンロ、温室、断熱材、温湿度計などがあり、これらの製品から多くの新たなアイデアが得られる。
 原価低減をする場合にも他社製品は非常に参考になる。
自社の製品と同じような製品を買ってきてそれを分解・検討し、使われている材料や部品、また加工・組立て方法を探る。
 それぞれの会社なりにさまざまな原価低減の工夫が随所にしてあり、徹底的な比較検討をすることにより、すぐに取り入れられるアイデア、検討の必要なテーマ、さらには自社・他社ともになかった原価低減の新たなアイデアなどが出てくるだろう。


9.顧客の要望を大切にする

 他社の製品から学ぶこととともに、顧客から学ぶ点も多い。
 まず製品を使ってみて、「使いにくい」「ケガをしそうになった」「こわれやすい」「味が悪い」「変な匂いがする」などのクレームがある。ありがたくはないが、クレームが来なければ製品の不具合はわからないし、またそれに対して適切な対策をうてば他のクレームの未然防止や思わぬ製品改良で売上を増やすことに大きく寄与できる。クレーム情報に「ありがとう」と思いたいものである。
 品質クレーム以外に、機能面で「このようなことはできないか」「こうしたらもっと便利だ」、また価格面では「もう少し価格が安くならないか」「他社ではもっと安いものがある」といったこと、そして納期面では「もっと納期を短縮できないか」「納期遅れが多い」という貴重な情報や、さらに「購入した店の状態や店員の接客態度」などといった幅広い情報が寄せられる。
これらの情報はいろいろな場面で実際に使ってみての「気づき」であり、徹底的に考えて対処することである。お金を出して買って使っている人の声ほどマトを得たものはない。
 このようなクレームや要望は直接会社に電話がかかってきたり、営業マンが聞いたり、またはがきや手紙がきたりするが、その応対は非常に大切で、情報が確実に経営トップにまで届くようにすること、情報をくれた人には御礼の手紙を必ず出すことである。
その製品や当社のファンになって友人に紹介してくれたり、貴重な情報をどんどんと提供してくれるかもしれない。
 顧客の要望を単なるクレーム対応でしかとらえていない会社も多くあるが、この対応のちがいでライバルに大きな差をつけよう。


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ちょっと休憩 「マイナス言葉お断り」

 「今は時間がない」「それは不可能だ」「ちょっと困難だ」「私には能力が無い」など、これらの言葉は行動を妨げるマイナス言葉である。
これらのマイナス言葉を使うことにより、「行動を鈍らせる」「発想を妨げる」「努力を無意識に嫌う」など、自分がこれから挑戦しようとする行動に対して心理的にマイナスに影響する。
たとえば「あることに挑戦しよう」と決心をしたときに、「それは君には困難だよ」といわれたらどうだろう。最初からやる気をそがれてしまうか、またそのことが本当に困難に思えてくる。
だからマイナス言葉をよく使う人とは、話をしないことに限る。
行動力を高めるためには、日頃からマイナス言葉とは逆に、「何でもできる」「時間はたっぷりある」「きっとよい案がある」といったプラス言葉ばかりを使うようにしよう。


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